家づくりの進め方 〜ひとつ家ができるまでの実例をご紹介〜

【建物概要】

鉄筋コンクリート造マンションの一室

専有面積:約70㎡ 

最寄り駅:大阪市営地下鉄御堂筋線「江坂駅」

家族構成:夫(30代)妻(30代)息子(中学生)娘(小学生)

建材:床:チーク無垢 壁:ビニルクロス 天井コンクリート打放し

   キッチン天板:コンテニューオ左官仕上げ キッチン家具:チーク突板

   取手:HEWI

この建物は、戸建て住宅とマンションが建ち並ぶ住宅街に立地している。

対象となる専有部分は13階にあり、バルコニーからは十分な採光が確保され、大阪市内が望める。

新築購入時から7年をここで過ごしてきたクライアントからは、現在の間取に対する具体的な不満が多数あげられた。

南北の風通しを遮る和室の押入、寝るとき以外使えない北側の2つの部屋、狭いリビングダイニング、用途の無い和室、使いにくい収納、安っぽいフローリング、白すぎて汚れが目立つ洗面の床など。

リノベーション後は、家族が集まってゆったり過ごすことができるスペースと、それぞれのプライバシーを保つことができるスペースを確保し、家事がしやすく子どもたちと良い距離感で過ごすことができる暮らしを望んでいた。

クライアントの不満は大きくわけて2つ。

間取の問題と建材の問題が存在していることがわかった。

間取の問題については、限られた広さの中で使われていないスペースの存在と、逆によく使われているスペースには必要な広さを確保されていないこと、また風通しなどを無視した間取構成などがあげられた。

一方、建材の問題では、クライアントが求めている暮らしには合わない、シートやプリントなどの新建材が多く使用されている点があげられた。

最初に取り組んだ間取づくりでは、全ての空間を無駄無く使いきること、全ての部屋に光と風を通すこと、それぞれのプライバシーが確保できることなどを検討した。

結果、◯LDKという概念をやめ、用途に合わせて居場所をつくることにした。

個人スペースとして妻、息子、娘それぞれにデスクスペースと寝室スペース、収納スペースを設け、その間に光と風と視線が通る600㎜幅の道をつくった。

この道をつくることで3室の真ん中の部屋まで光と風が届くようになるとともに、親が子を見守ることができる視線も併せて確保することができた。

また、個々のプライベートを確保するため、上記の道とは別に廊下を確保し、それぞれの部屋から廊下へ出入できるように計画している。

将来的に子どもたちが個室を希望した際は、デスクスペースと寝室スペースの間を間仕切ることで対応ができるようにも計画している。

個人スペースに必要な広さを確保したうえで、皆が集まるスペースは南側に配置した。

北東角には唯一の個室を配置し、生活時間帯が異なる夫の部屋とした。

この部屋は寝るとき以外に使用されることが無いため、余剰スペースを共用収納として廊下側に配し、収納量を確保した。

次に、これからの暮らしに合う素材やデザインを提案していった。

経年変化を楽しみながら暮らしていけるような本物の素材を中心に使用し、統一感のある空間づくりを目指した。

床、建具、窓枠に使用したのはチーク材。落ち着いた雰囲気と高級感からチーク材を選定した。

チーク材の多用により素材の強さが出過ぎないように、一部の建具をメラミンでつくり、HEWI社の取手を使うなどして空間を少しやわらげた。

キッチンの位置変更も検討したが、動かすことができないパイプスペースの制約のため、既存位置が最適であるとの判断に至った。

キッチンのデザインでは、横に連続する扉を配することでパイプスペースの存在感を無くした。また、斜めにカットされた天板とカップボードの壁、天井を同一素材とし、リズム感を持たせた。

天板にはイタリアメーカーの樹脂セメントを、家具にはチークの突き板を使っている。

最後に、打放し仕上げにした個人スペースの天井には照明器具が露出しないように計画した。間接的に天井を照らすことで影が出にくく、作業をする際に目にやさしい。

また天井をスッキリ見せることで広さを感じられるように計画した。